『その悩み「9割が勘違い」科学的に不安は消せる』石川幹人先生による進化心理学のお話 感想・レビュー

こんにちは。鈴木笑里です。

私は大学時代に心理学をかじっていたのですが、その時の恩師、石川幹人先生から最近オススメされた恩師の著書を読んでみましたので、ご紹介します。

この本を読むべき人

まず、なぜこの本をご紹介していただいたかと言うと、「今の私に必要」だと思ってくださったからだそうです。

というのも、私が新たに婚活事業を始めたことをお伝えしたら、「この本が参考になる」と仰ってくださったのです。

多くの人と関わり、一人一人とも深い関わりを持つ「婚活アドバイザー」は、相手の内面を理解し、適切なアドバイスを投げかけてあげる必要があります。

石川先生は聡明な方ですから、きっと、一瞬にして私が求めている「身に付けたいと思っている知識・技術」を理解されたのだと思います。

現代社会の悩みを科学的に解決することの方法論を提示している本なので、人にアドバイスをするにもきっと参考になるよ、ということでした。

私以外にも、お仕事や学校で何かしらの悩みがある方、悩みはなくてもなんとなく生きづらい方には、ヒントになる部分がたくさん散りばめられている本だと思います。

学校を卒業して初めて広い社会に飛び込もうとしている方や、逆に長年働かれた管理職の方などにも刺さる部分は多いかと思います。上の立場の方は特に、教養として知っていたら役に立つのではないかと思う内容が詰まっています。

科学的に様々な悩みの解決策を示している、人間の心を理解するのに非常に役立つ本となっています。

あの人のことを理解したい、もっと人間らしい心を身に付けたい、などとお考えの方にもヒントになるかもしれません。

考え方は基本的に「進化心理学」に則っている

著者の石川幹人先生は、進化論が心理学や社会学に与える影響を長年研究されてきて、「進化心理学」という学問が専門分野の学者さんです。

その為、この本は、進化心理学という学問を考え方の元にして成り立っています。

進化心理学という学問の根本的な考え方は、「人間の心と現在の環境にはギャップがある」というものです。

つまり、こういうことです。

進化心理学の考え方「心と環境にギャップがある」とは

人間が進化の過程で今の心の構造を手に入れたのはマンモスを狩っていた狩猟採集時代です。

この頃は100人程度の協力集団で暮らしており、生涯で関わる人間はそれだけでした。

非常に単純な仕組みの中で生活をしていた。

一方、現代社会で生きていくにはいくつもの集団に属する必要があります。

家族、学校、職場、地域の集まり、趣味の集まり、など。

このような中で「いくつかの自分」を使い分けていかなければならないのです。

しかし、人間の心は、狩猟採集時代の単純な生活にマッチするように進化してきました。

生物が進化するのに必要な時間は何万年という単位です。

現代の複雑な社会制度が始まったのはせいぜい最近数千年のことです。

現代社会の環境で生きていくには、人間の心は進化しきっていないのです。

これが、「心と環境のギャップ」ということの説明です。

心と環境のギャップにより現代の悩みが生じている

人間の心は数万年前の狩猟採集時代のまま。

しかし、環境はどんどん進歩して、ここ数十年はコミュニケーションツールも発展している。

特にネット環境の進歩はめざましいものです。

生物が進化して環境に適応するには何万年という時間がかかるのに、ここ数年で発展したネット社会(情報社会)にそう簡単に馴染める訳がありません。

これが、現代社会の悩みの要因だとこの本は言っているのです。

SNS疲れに関する悩みを科学的に解決

例えば、この本で挙げられているのが、SNSに関する悩みです。

「みんなキラキラしたリア充に見えるのに、自分なんて…」という感情を抱いたことがある方も多いと思います。

これも「心と環境のギャップ」が要因で引き起こされる悩みなのです。

狩猟採集時代の協力集団は100人〜最大150人程度で狩りをする生活をしていました。

その環境では、見栄を張って上に立つことで享受できる利益が非常に大きかったと考えられます。

食糧が少ない中で、上に立てば獲物を確保できて生存確率が上がる。

上の階層の方が配偶者を得やすいので子孫を残すことにも繋がる。

大昔の環境では、「見栄を張って上に立つ」ことが生存に直結するほど、重要なことだったのです。

しかし現代ではどうでしょうか。

狩猟採集時代ほど見栄張りで得られるメリットは多くはありません。

寧ろ倦厭されることの方が多いでしょう。

それにも関わらず、大昔の心のまま、SNSでの見栄張り行為がやめられないのが現代の人々なのです。

これを解決するには、まずはギャップを自覚すること。

「見栄を張ってもあまり良いことはない」と自分に言い聞かせるのです。

「言い聞かせる」というのは、人間に特有の「理性」の為せる技です。

そしてSNSで見えている他人の投稿は、生活の一部でしかないということを認識しましょう、と書いています。

盛ることも嘘をつくことも簡単にできてしまいます。

そのような一部の投稿から人物の評価をしてしまうのは大変危ういことです。

さらに、SNSと共存していくには、自分もうまく利用して自己表現をするようにすれば、承認欲求も満たされるというものです。

人の投稿を見て焦るのはやめ、文章や写真を使って、自分がキラキラ輝ける場として利用していこう。

と、このように、現代社会に特有の悩みを多く挙げ、その一つ一つの原理を科学的に解説し、解決策まで提示してくれる本になっています。

感想:理性による問題解決の方法が分かる良著

最後に、読んでみた私個人の感想です。

人の悩みというのは多くが人間関係に関するものなので、感情的に考えがちです。

しかし、悩みを解決したいと思ったら、まず、なぜその悩みが生じているのか、生物学的に、進化論的に、脳科学的に、考えてみる。

科学的な視点を持つと、理性的に解決策が浮かび上がってくることも多いのだと知りました。

解決を目指すのであれば感情的になって悩んでいても仕方がないということを改めて感じさせられたような気がします。

一言に集約すると、理性的な問題解決の方法が理解できる良著だと感じました。

最後に:当たり前の概念をなくす 理性を育てる教育の重要性

また、本書とは別の論点になってしまいますが、個人的に感じたこととしては、「教育」の重要性です。

数万年前までの狩猟採集時代には本能的な欲求だけで生きていけたのですが、現在では社会が複雑化していて本能だけでは生き延びることができなくなってしまいました。

そこで理性的な考え方や価値観が必要になりました。

しかしそのような視点は生まれながらに身に付いているものではないので、生まれ育った環境による「教育」が重要になってくるのです。

ただ、この教育というものは諸刃の剣だと思うのです。

生存に都合の良い価値観を教え込まれれば良いですが、環境によってはそうとは限りません。

それでも人間は素直に飲み込んでしまうので、凝り固まった考え方を教育者によって植え付けられてしまう可能性も高いのです。

日本が悪いとは言いませんが、戦後の教育が良い例でしょう。

良い大学に進学して、良い会社に就職して、銀行に充分な蓄えをして、20代で結婚し、子供をもうけたら一人前になり、家を建てる。

老後は田舎で孫と遊びながら年金でのんびりと暮らす。

このような価値観を植え付けられている人が多いのではないでしょうか。

実際は何一つ「当たり前」のことはないのですが、教育された結果、理性どころか、感情のレベルでもそのような凝り固まった価値観を信じ込んでしまっている人が多いことに疑問を抱きます。

当たり前の概念を取っ払い、国民一人一人が、柔軟性のある「理性」を育てる必要があると感じています。

この点が、国がさらなる発展を遂げるかどうかの分かれ道とさえ感じます。

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