現代社会では、日々の生活において数え切れないほどの決断を下さなければなりません。
しかし、認知心理学的な観点から見ると、人間は1日に限られた回数の決断しか行えないという研究があります。
この制限に立ち向かい、生産性を上げる工夫について考えてみたいと思います。
人間は1日に最大3万5000回の決断をしている!?
最近示されたケンブリッジ大学の研究によると、人は1日に最大3万5,000回の決断をしているそうです。
3万5,000回というのは生活環境によって個人差もあるのであまり正確な数字ではないかもしれませんが、多くの人が日々の生活の中で無意識に数多くの決断を下していることに違いはありません。
また、以下のような研究結果もあります。
- 人が1日に使用する単語の数は、無意識に取捨選択された約1万6,000語である(アリゾナ大学とテキサス大学の合同研究)
- 食べるものや場所といった食事に関する事柄だけでも、人間は1日に2,267回の決断をしている(コーネル大学のJeffery Sobal教授らの調査)
- 車を1マイル(1.7km)運転するにつき、200を超える決断をしている(米国労働安全衛生局の報告)
これらの研究によると、私たちは、言語、食事、交通といった事柄だけでも、1日で平均2万回以上も選択をしているそうです。
これに、歩く・座るといった、体をどう動かすかについての決断や、会社や自宅で行なっている決断まで全て含めると、3万5,000回に及ぶというのです。
1日24時間のうち、起きているのが17時間だとすると、大体2秒に1回くらい何らかの決断(無意識的なものも含め)をしていることになります。
確かに、自分の生活を振り返ってみると、起きてから寝るまでが決断の連続だと思います。
アラームが鳴った。とりあえず止めよう。起きようか、それとも二度寝しようか。あと少しだけ・・・5分だけ寝よう。起きたら最初にトイレに行く?いや、先に歯磨きをしよう。次は顔を洗って、いや、その前にトイレの電気を消して、あ、タオルも用意しないとな・・・
これらの行動に、歩くことやほぼ無意識的な行動なども含めると、2秒に1回くらいは決断をしていると聞いても納得してしまいます。
これらの日常的な行動にプラスして学業や仕事に関しての意識的な決断もしていると考えると、1日に気が遠くなる程の回数を重ねていることがわかります。
そう考えると、1日の遅い時間になると脳が疲れてきてパフォーマンスが低下するのは当然だと思えますよね。
天才たちの決断を減らす工夫
歴史上の「天才」と言われる人の多くは、数多くの決断をせずに、残ったエネルギーを仕事や創造性を発揮することなどに充てていたと言われています。
例えば、アップルの創業者スティーブ・ジョブズは、黒のタートルネックにジーンズ、スニーカーという毎日同じ服装で過ごしていたことで有名です。
フェイスブックの創設者であるマーク・ザッカーバーグも同じようなライフスタイルを採用していた天才の一人です。
米国のオバマ元大統領やアインシュタインも、決断回数を減らす為に毎日同じスーツを着ることに決めていたのだそうです。
彼らのこのようなスタイルは時間と労力の節約のためであり、節約できた時間とエネルギーは全部仕事や新しいものを生み出すことに充てられていました。
また、18世紀のドイツの哲学者カントも規則的な生活を好んでいたことで有名です。
毎朝起きると紅茶を2杯飲み、寝巻きのまま仕事の準備をして、決まった時間になると散歩をする。
街の人々もカントが時間に正確なのを知っていたので、カントの散歩する姿を見て時計の針を直した程だと伝えられています。
規則正しいライフスタイルも、毎日の決断を極力減らし、生産性を上げるために寄与していたと考えられます。
決断回数を減らして生産性を上げる工夫5選
ではここからは、天才ではない私たちでも毎日取り入れられそうな「決断回数を減らす工夫」について提案させていただきます。
1、毎日の朝食を固定化する
朝食は一日のスタートを切る重要な瞬間です。
しかし、毎朝何を食べるか迷うことは、貴重な決断力を消耗することにも繋がります。
毎日の朝食を固定化することで、その日の初めの決断をシンプルにし、エネルギーをより有効に活用できるようになると考えられます。
ただし、朝から食べ過ぎるのは禁物です。
洋食が好きならパンとソーセージにハムエッグ、和食好きなら納豆と卵かけご飯など、軽い食事を決めてしまうと効率よく日々の生活を送れそうです。
より軽く済ませたい場合はバナナと豆乳(またはプロテイン入り飲料)などという組み合わせも良いですね。
毎朝の食事を完全に固定化してしまうことで、買い物も楽になるので、お店で迷う時間や労力も削ることができて一石二鳥です。
着る衣服をパターン化する
衣服の選択も1日における小さな決断の一つですが、毎日服を選ぶことは思った以上に時間とエネルギーを消費します。
歴史上の天才も多くの人が取り入れていたように、衣服をパターン化することで生産性をアップさせることが可能です。
しかし、毎日多くの人と会う人や様々な場所に出かける人は完全に固定化するのは難しいかもしれません。
そのような場合、TPOに合った服装を何パターンか用意しておくのが良いと思われます。
例えば、ビジネスの大事な商談の場に行く時はこのスーツとネクタイを着用する、昔からの友人と会う時はこのカジュアルな服装、恋人とのデートはこのパターンの中から選ぶ、など。
予め何パターンか用意しておき、その中からすぐに決められるようにしておけば、準備の時間も労力も最低限に抑えることができます。
洋服をパターン化することで、朝の準備時間を短縮し、大切な決断力を他の重要な瞬間に集中させることができるようになります。
昼食メニューを1週間or曜日で決める
昼食の選択も、日々の中で頻繁に行われる決断の一つです。
毎日迷うことなく昼食を済ませるために、週初めにメニューを決めておくことで余計な決断を省きます。
毎日外食をするのであれば、曜日によって行くお店を決めておく。
お弁当を作るのであれば、週末にまとめて作っておく。
コンビニなどで買う場合は、栄養バランスの取れたメニューを週初めに何パターンか決めておく。
これらのパターン化も、仕事や学業に集中するための余裕を生んでくれるでしょう。
ただ、食事にかなりのこだわりがあり、食べることに大きな喜びを感じるという人は、そこまで厳密にパターンを決めなくても良いかもしれません。
今日はご飯、明日は麺、など、ざっくりジャンルを決めておき、その時の気分によって食べたい物を決定するのでも良いかと思います。
この辺りは効率と感情の両立を図れるように、自分の中で最適なバランスを探してみてください。
デジタルの整理・デトックスをする
スマートフォンやソーシャルメディアの利用も、日常的な決断を大きく左右します。
まずは、スマートフォンのアプリの整理から始めてみることをおすすめします。
使用頻度の低いショッピングやSNSのアプリなどは思い切ってアンインストールしてみてはいかがでしょうか。
日常的に使っているアプリに絞ることで、余計な決断をする必要がなくなり時間とエネルギーの節約に繋がります。
余裕が出てきたら写真や古い書類なども断捨離して、大切なものを抽出する作業をしてみると良いと思われます。
仕事や日常生活の中で本当に必要なものだけを残すことで、無駄な決断に使う時間が減りエネルギーの温存が可能になること間違いなしです。
また、特に朝起きてすぐの時間帯や夜の就寝前にデバイスから離れ、デジタルデトックスを導入することも試してみる価値がありそうです。
電子デバイスから離れることで、余計な情報過多からくる決断疲れを更に軽減できるはずです。
身の回りの物を減らす
余計な物や活動を減らし、シンプルなライフスタイルを実践することで、日々の決断回数を減少させ、精神的な余裕を生むことができます。
とは言え、物に囲まれた現代の生活からすぐに脱することはなかなか難しいと思いますので、自分の身の回りのできることから少しずつ取り入れてみることをおすすめします。
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生活をシンプルにして決断疲れを回避しよう
世界中の研究が示しているように、私たちは1日に数多くの決断を重ねています。
そして決断回数がある限界値に達してしまうと極端に脳のパフォーマンスが低下することも、経験上、多くの方が実感していることと思います。
決断回数の過多によるパフォーマンスの低下を回避する為には、生活をルーティン化してよりシンプルにし、決断回数を極力減らす工夫が不可欠です。
是非とも、自分に合ったシンプルライフを探してみてください。