私が石を拾う理由──”5億年モノ”の翡翠(ヒスイ)の魅力とは

見た目は石ころ、中身は宝箱──翡翠(ヒスイ)探しの魅力

「えっ?石拾うの?」
翡翠(ヒスイ)探しが趣味だと言うと、たいてい驚かれる。

そう、石だ。でも、ただの石ではない。日本の“国石”であり、“宝石”でもある。
私は新潟の海岸に定期的に通っているが、海で拾えることを知っている人は意外と少ない。

2016年に国石に選ばれたとはいえ、まだまだ知られていないんだなと思う。
そんな人にこそ、この小さな自然の結晶の魅力を知ってほしい。


驚きの詰まった自然の結晶

翡翠の魅力は、一言でいえば「驚きの宝箱」だ。

一見、ただの石ころに見えるのに、よく見ると細かな結晶がキラキラと輝き、見事に光を通すものもある。

色もさまざまで、鮮やかなアップルグリーンや柔らかなラベンダー色に出会えることもある。

そして、手に取ったときのすべすべ感。自然の石とは思えないほどなめらかだ。

形にも特徴がある。

海や川で転がされ、丸くなった他の石と違い、翡翠には角が残っている。

これは、翡翠がとても硬い証拠だ。

よく「世界一硬い宝石はダイヤモンド」と言われるが、実は“割れにくさ”では翡翠が勝るとも言われている。

そのため、何億年も波に打たれ続けても完全には丸くならず、角を保ったまま存在している。

5億年を生き抜いたその姿は、まるで芯の強さを物語っているかのようだ。

この翡翠は、一見「ただの石」っぽい。しかし、ライトを当てると透過して綺麗なアップルグリーンが出てくる。
ブルー系に透過するものも。

理科の教科書によってもたらされた初めての衝撃

私の石好きの原点は、中学の理科の教科書だ。

火山のページに載っていた火成岩の写真。

遠くから見れば黒っぽいただの石なのに、拡大すると結晶がぎっしり詰まっていて、まるで宝石のように輝いていた。

あのとき、「自然の中にこんなに綺麗なものがあるのか……」と衝撃を受けたのを今でも覚えている。


翡翠(ヒスイ)は、あの日の衝撃を丸ごと閉じ込めた存在

翡翠は、そのとき感じた驚きを、さらに凝縮した存在だ。

色、形、手触り、硬さ、透過性──ひとつひとつが自然の奇跡でできている。

原石を手にすると、光の加減や触覚が加わって、写真では伝わらない美しさがある。

この“写真の印象と本当の姿のギャップ”をどう伝えるかは、私の二つの仕事にも通じる。

司会者として、日本語教師として、私は相手に「伝わる言葉」を探し続けてきた。

触ったときのすべすべ感や、光に透けた瞬間の色、そして見つけたときの感動も──。

翡翠を探しながら、もっと正確で鮮やかな表現も見つけたい。

良質なアップルグリーンの翡翠。これを磨けば宝石になる。

次の海へ・・・

来月も、新潟県糸魚川市へ行く予定だ。

──そう、日本で唯一、翡翠が拾える場所。

次回の旅で、どんな「言葉」が見つかるか楽しみだ。

1行自己紹介

鈴木笑里(すずきえみり)/イベント司会者&日本語教師。翡翠と一緒に、言語感覚も日々研磨中。